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現状、専門性の高い業務じゃないとダメなのです
現在、日本の就労ビザといわれる在留資格では「単純労働」と言われる分野での就労はできません。
「単純労働」ってなんでしょう。
わかりやすく言えば、
- 工場のラインでコンベアに乗った団子を箱詰めする
- 自動車整備工場で、タイヤ交換・オイル交換業務に従事する
- 飲食店でホール係・調理補助に従事する
- コンビニのレジ・品出し業務
「作業」的な意味合いがあり、実際に身体を動かす仕事は単純労働とみなされる可能性が高いです。
身体を動かさず、いわゆるデスクワークの仕事ならどうでしょうか。
入管が求めている専門性の高い仕事に該当しやすかもしれません。
でも、経理の仕事をするってことで申請書類を作成して、めでたく在留資格「技術・人文知識・国際業務」の許可が出たとしても、実際の業務では「EXCELに単なる数字の打ち込みをする」「伝票整理をする」「人が足りないから現場の手伝いする(させられる)」なんかしてたらダメなんです。
上記の業務は「作業」的な意味合いが強く、専門性の高い仕事とは言えなくないですか?
実際にビザ(在留資格)を取ってしまえばわかんねーだろって感じで、現場の仕事・作業的な業務にシフトチェンジをしているところがあるかもしれません。
もちろん次の在留期間更新許可申請において問題になるかもしれなし、書類上は問題なければ順調に更新を重ねるかもしれません。
不許可(不交付) になれば、次の再申請は非常にハードルが高いものとなり、許可を勝ち取るには相当な困難が予想されるのです(再申請・再々申請は、先の申請との齟齬(食い違い)があると、途端に不許可の確率があがる)。
更には、
就労ビザ(例:在留資格「技術・人文知識・国際業務」)の許可を得るには…
- 学歴要件(専門学校卒・大卒等)又は実務経験要件(10年以上の経験)
- 業務と学んできた知識との関連性
- 日本人と同等以上給与額
予想以上にハードルが高いんです。
特に専門学校卒の留学生が在留資格「留学」から「技術・人文知識・国際業務」に資格変更する場合は。
大学は4年間(短大は2年間)、時間をかけて幅広い分野を勉強します。
私も大学に通いましたが、1年・2年次は一般教養メインで高校生の延長のようなイメージで、3年・4年次から専門分野に特化したゼミに所属して、深く掘り下げた勉強をしていきます。
歴史専攻→民俗学→坂上田村麻呂に関する伝説
就職には何の役にも立たない知識です。
仮に私同じ学科・専攻をした留学生がいたとすれば、どんな仕事が展開できるでしょうか。
非常に狭い分野ですし、関連する業務を探すほうが骨が折れそうです。
しかし、
組み立て方によってはいけるだろうし、そこが行政書士の腕の見せどころです。
もちろん、
- 予定しない業務をやることにする
- 業務量はないけど、あることにする
こういうことは論外ですし、行政書士がそのことを知った上で申請することはできません。
あくまでベースがあっての組み立てになります。
そこへ来ての在留資格「特定技能」とは?
マスコミ的には「単純労働可の在留資格がで創設された」と謳っていますが、政府は「単純労働」とは言ってなくて「特定技能外国人を受け入れる分野」と言っています。
当初は何を言ってるのかよくわからない部分でしたが、
生産性向上や国内人材確保のための取組を行ってもなお、人材を確保することが困難な状況にあるため、外国人により不足する人材の確保を図るべき産業上の分野
これが「特定産業分野」であり、「中小・小規模事業者をはじめとした深刻化する人手不足に対応するため、生産性向上や国内人材の確保のための取組を行ってもなお人材を確保することが困難な状況にある産業上の分野において、一定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人を受け入れていく仕組みを構築」していくことが「制度の意義」となっています。
「単純労働」とは言ってないです。ただ明確に「人材を確保することが困難な状況にある」分野、すなわち「人手不足」の分野とはハッキリ言っています。
日本人でも働き手が来ない…。んー、困った。やべー。
賃金は上げようにも上げられないし、上げたところで応募すら来るかわからない。
んじゃ、バイトでも良いから入れるべ。
留学生のバイトなら、すぐに来るらしい。
おぉ、実際よく働いてくれる!このままウチに就職すればいいじゃね?
ってか、そうしよう。
なに?それは難しいって??
なんでよ。
ウチが単純労働の仕事内容だからってか!
ふざげんな、コノ!!「ギジンコク」(技術・人文知識・国際業務)は絶対無理だわ。
技能実習生を入れるにしても、受け入れ人数は決まっているし。
困ったー(´;ω;`)
そんな政府も重い腰を上げて、十分な審議もしないまま慌てて「人手不足の産業分野」への外国人材受け入れへと舵を切っていったのです。
徐々に決まっていた中身。
まずは受け入れ分野について。
外国人材を受け入れる分野
分野 | 受入れ見込み数 | 技能試験 | 日本語試験 | 従事する業務 | 雇用形態 |
---|---|---|---|---|---|
介護 | 60,000人 | 介護技能評価試験(仮) 【新設】等 | 日本語能力判定テスト(仮)等 (上記に加えて) 介護日本語評価試験(仮)等 | ・身体介護等のほか、 これに付随する支援業務 ※訪問系サービスは対象外 【1試験区分】 | 直接 |
ビルクリーニング | 37,000人 | ビルクリーニング分野特定技能1号評価試験 【新設】 | 日本語能力判定テスト(仮)等 | ・建築物内部の清掃 【1試験区分】 | 直接 |
素形材産業 | 21,500人 | 製造分野特定技能1号評価試験(仮) 【新設】 | 日本語能力判定テスト(仮)等 | ・鋳造 ・塗装 ・仕上げ ・アルミニウム陽極酸化処理 ・溶接 ・鍛造 ・機械検査 ・ダイカスト ・工場板金 ・機械保全 ・機械加工 ・めっき ・金属プレス加工 【13試験区分】 | 直接 |
産業機械製造業 | 5,250人 | 製造分野特定技能1号評価試験(仮) 【新設】 | 日本語能力判定テスト(仮)等 | ・鋳造 ・塗装 ・仕上げ ・電気機器組立て ・溶接 ・プラスチック成形 ・鉄工 ・機械検査 ・プリント配線板製造 ・工業包装 ・ダイカスト ・工場板金 ・機械保全 ・プラスチック成形 ・機械加工 ・めっき ・電子機器組立て ・金属プレス加工 【18試験区分】 | 直接 |
電気・電子情報関連産業 | 4,700人 | 製造分野特定技能1号評価試験(仮) 【新設】 | 日本語能力判定テスト(仮)等 | ・機械加工 ・仕上げ ・プリント配線板製造 ・工業包装 ・金属プレス加工 ・機械保全 ・プラスチック成形 ・工場板金 ・電子機器組立て ・塗装 ・めっき ・電気機器組立て ・溶接 【13試験区分】 | 直接 |
建設 | 40,000人 | 建設分野特定技能1号評価試験(仮) 【新設】等 | 日本語能力判定テスト(仮)等 | ・型枠施工 ・土工 ・内装仕上げ/表装 ・左官 ・屋根ふき ・コンクリート圧送 ・電気通信 ・トンネル推進工 ・鉄筋施工 ・建設機械施工 ・鉄筋継手 【11試験区分】 | 直接 |
造船・舶用工業 | 13,000人 | 造船・舶用工業 分野特定技能1号 試験(仮) 【新設】等 | 日本語能力判定テスト(仮)等 | ・溶接 ・仕上げ ・塗装 ・機械加工 ・鉄工 ・電気機器組立て 【6試験区分】 | 直接 |
自動車整備 | 7,000人 | 自動車整備特定 技能評価試験(仮) 【新設】等 | 日本語能力判定テスト(仮)等 | →自動車の日常点検整備 →定期点検整備 →分解整備 【1試験区分】 | 直接 |
航空 | 2,200人 | 航空分野技能評価試験 (空港グランドハンドリング又は航空機整備)(仮) 【新設】 | 日本語能力判定テスト(仮)等 | ・空港グランドハンドリング →地上走行支援業務 →手荷物・貨物取扱業務等 ・航空機整備 →機体、装備品等の整備業務等 【2試験区分】 | 直接 |
宿泊 | 22,000人 | 宿泊業技能測定試験(仮) 【新設】 | 日本語能力判定テスト(仮)等 | →フロント →企画・広報 →接客 →レストランサービス等の宿泊サービスの提供 【1試験区分】 | 直接 |
農業 | 36,500人 | 農業技能測定試験 (耕種農業全般又は畜産農業全般)(仮) 【新設】 | 日本語能力判定テスト(仮)等 | ・耕種農業全般 →栽培管理 →農産物の集出荷 →選別等 ・畜産農業全般 →飼養管理 →畜産物の集出荷 →選別等 【2試験区分】 | 直接 派遣 |
漁業 | 9,000人 | 漁業技能測定試験 (漁業又は養殖業)(仮) 【新設】 | 日本語能力判定テスト(仮)等 | ・漁業 →漁具の制作・補修 →水産動植物の探索 →漁労機械の操作 →水産動植物の採捕 →漁獲物の処理・保蔵 →安全衛生の確保 ・養殖業 →養食資材の制作・補修・管理 →養食水産動植物の育成管理・収獲(収穫)・処理 →安全衛生の確保 【2試験区分】 | 直接 派遣 |
飲食料品製造 | 34,000人 | 飲食料品製造業 技能評価試験(仮) 【新設】 | 日本語能力判定テスト(仮)等 | ・飲食料品製造業全般 →飲食料品(酒類を除く)の製造・加工 →安全衛生 【1試験区分】 | 直接 |
外食業 | 53,000人 | 外食業技能測定試験(仮) 【新設】 | 日本語能力判定テスト(仮)等 | ・外食業全般 →飲食物調理 →接客 →店舗管理 【1試験区分】 | 直接 |
特定技能1号・特定技能2号
在留資格「特定技能」は1号と2号が創設されます。
内容は以下の通り
特定技能1号
- 在留期間:1年、6ヶ月又は4ヶ月ごとの更新(通算で上限5年まで)
- 技能水準:試験等で確認(技能実習2号を修了した外国人は試験等免除)
- 日本語能力水準:生活や業務に必要な日本語能力を試験等で確認(技能実習2号を修了した外国人は試験等免除)
- 家族の帯同:基本的に不可
- 受入れ機関又は登録支援機関による支援の対象
特定技能2号
- 在留期間:3年、1年又は6ヶ月ごとの更新
- 技能水準:試験等で確認
- 日本語能力水準:試験等での確認は不要
- 家族の帯同:要件を満たせば可(配偶者、子ども)
- 受入れ機関又は登録支援機関による支援の対象外
ただし…
特定技能1号は通算で上限が5年しか在留できません。
永住許可申請における10年要件を満たせないので、どうしても「終わったら帰ってください」的なものを感じます。
家族の帯同も基本的に認められないので、母国にいる配偶者や子ども(在留資格「家族滞在」での在留資格認定証明書交付申請が不可)を呼び寄せることもできません。
自分がその身であったなら、家族を残して外国に働きに行けるかな…。
『移民政策』を取らないということが、如実に現れていると感じます。
特定技能2号については、特定技能1号から移行するのはまだ先の話になります。
特定技能1号の全職種がそのまま特定技能2号でもできるのかもわかりません。
動きながら決めていくようです。
技能実習生はそのまま移行?留学生は?

在留資格「技能実習」は、日本で習得した技能・技術又は知識を発展途上国等へ移転を図り、開発途上国等の経済発展を担う制度です。
実習生は日本で技術等を学び、企業側は技術移転で貢献することになっていますが、実際は人手不足の部分を補っているといえます。
企業単独型・団体監理型など形式の違いはありますが、技能実習1号(1年)や技能実習2号(2年)で基本的に3年間(3号も入れると5年間)の実習実施期間となり、専門的な仕事に従事します(同じ「技能実習」でも「1号」から「2号」への移行は別物扱いなので、更新許可申請ではなく変更許可申請)
期間が満了すれば母国に帰ることになっているので、日本人と結婚したとしても実習生が在留資格「日本人の配偶者等」に変更できるかといえば難しいのが現状。
技術の移転を図る制度のはずですが、今回の在留資格「特定技能」の新設で「技能実習2号」からの移行が想定されています。
当初、そのあたりの矛盾を回避すべく、一旦帰国してもらっての在留資格認定証明書交付申請(外国からの呼び寄せ手続き)になるのかなぁと予想していましたが、ダイレクトに変更許可申請になる模様。
また在留資格「留学」で在留中の外国人留学生も変更許可申請ができるか注目をしていたら、明確に変更許可申請ができることが判明しました。
留学生にとっても学校(特に日本語学校・専門学校)にとっても将来を左右する法改正ですから。
関係者にとって、とても重要な判断材料が出たことになります。
現在、在留資格「技術・人文知識・国際業務」に変更することで就労することができていたわけです。
理系(IT系)なら業務内容との関連性や専門性がわかりやすいですが、文系ですと貿易・経理・マーケティングその他諸々…幅広い解釈で在留資格「技術・人文知識・国際業務」に当てはめてきました。
「特定産業分野」への就労を認めるわけですから、在留資格「技術・人文知識・国際業務」については今まで以上に審査を厳しくて、単純労働と思しき文言・文章があった場合はすぐに不許可の方法へと舵を切ることも想定されます。
いずれにせよ、「留学」からの変更許可申請を認めるならば、無理して難しい「技術・人文知識・国際業務」に拘る必要もなく、とりあえず就労で稼げる「特定技能」に殺到していく可能性も。
永住許可申請へのハードルが高くなること・家族帯同ができないことを忘れずに…ですね。
偽装「技術・人文知識・国際業務」を狙う者が出るのでは?
永住許可申請のハードルが高くなる・家族帯同不可、いいことなさそうな在留資格「特定技能1号」。
申請人である外国人からしたら、メリットがあるようには見えません。
でも、留学生(日本語学校→専門学校など)からしたら、重い借金を背負って4年間も待つ必要がなく、すぐに就労で稼げる「特定技能」も確かに魅力的です。
卒業を迎えても就労ビザが下りなければ、仕事をすることができません。
通常、在留資格「特定活動」(就職活動用)に資格変更をして、まずは6ヶ月就職活動をして、就職が決まらなければ更新許可申請をして更に6ヶ月の就職活動をすることができます(最大1年間)
在留資格「特定活動」でも資格外活動許可を得れば、留学生時代と同様に週28時間までのアルバイトはできます。
新しい在留資格「特定技能」ができたら、わざわざ就職活動のビザに変更しますかね?
もしかしたらこんなこともできるのでは…
- 「留学」から「特定技能」に資格変更
- 数年後、「特定技能」から「技術・人文知識・国際業務」に資格変更
- 家族の呼び寄せができ、永住許可申請のための在留歴のカウントが始まる
通常でしたら「特定技能」から「技術・人文知識・国際業務」への資格変更はできないでしょう。
本国で大学等の学歴を持っているならば、最初から「技術・人文知識・国際業務」で呼び寄せできているからです。
日本にいる留学生は卒業をすれば、専門士(専門学校)の称号をもらって、専門的な知識を有していることになっています。
業務内容と学んできたことの密接な関連性が立証でき、管理職的な立場になったので「技術・人文知識・国際業務」への資格変更をします。
…となれば、
おかしな点も見当たりません(そのあたりの抜け道も防ぐ制度になっているかもしれませんが…)
雇用先もグルになれば、所属機関の書類も帳尻があります。
偽装「技術・人文知識・国際業務」の出来上がり。
4月1日から始まりますが、走りながら制度が出来上がっていく感じがしてなりません。
まとめ
- 特定産業分野(14分野)に限られます。
- 学歴がなくても大丈夫です。
- 日本語能力水準(N4相当)や技能水準(技能試験)をクリアする必要はあります。
- 永住許可申請への高いハードル、家族帯同に制限もあります。
- 「技能実習」「留学」からの資格変更もあり。